アリスとウサギ


「あたしも啓介の店に移転しちゃおうかなぁ」

「愛羅(あいら)なら歓迎するけど、俺、手ぇ出せなくなるじゃん」

「愛羅じゃなくてミサって呼んで。その辺は上手くやろうよ。そういうとこ、変に真面目だよね」

 ふーん。

 この子、もう食われ済みってことね。

 ウサギの彼女だろうか。

「俺はいつでも真面目だよ」

「どこが。クロスのマヤちゃんともやったんでしょ?」

「え? マヤと知り合い?」

「前の店で一緒だったの」

「マジか。世間は狭いな」

 くっ……ウサギめ。

 本当に女ったらしなんだから。

 あの日、食われてなくて本当に良かった。

 アリスがそこまで聞いたところで、ドリンクバーの清掃は終わろうとしていた。