アリスとウサギ


「ご注文はお決まりでしょうか?」

 複雑な気持ちでウサギたちのテーブルへ行く。

 ウサギはジャケットを脱いでワイシャツを腕まくりしていた。

 そんな姿も様になっている。

 注文を取り終わり、調理場で簡単な補助をした。

 チラッとホールを見ると、ウサギはアリスにしたように、女の髪を指に巻きつけていた。

 なんか、ムカつく。

 あたしにしたのと同じこと、他の女にもしてるんだ。

 イライラは募るが、相手はお客様。

 顔に出すわけにも行くまい。

「お待たせしました」

 注文の品を運んだ時は、テーブルの上で指を絡めていた。

 この女、きっとあの部屋にお持ち帰りされるんだ……。

 アリスはドリンクバーの清掃をしながら、再び彼らの会話を盗み聞きしてみることにした。

 彼女の鼻にかかる甘ったるい声は、うるさいほどによく聞こえる。