アリスとウサギ


「あはは、冗談だっつーの」

 子供をあやすように頭をポンポンと撫でられ、頭皮を伝って彼の熱がまた体に入り込んできた。

 体は先ほどの刺激を思い出し、キュッと力が入る。

 またからかわれたんだ……。

 冗談でこんなことするなんて、何なの、もう。

 アリスは持て余した感情を言葉でしか発散できない。

「冗談に聞こえないんだよっ」

「あ、ほんと? 期待させてごめんね」

「はあ? 期待? バッカじゃないの?」

 敵わない……。

 もう何も言うまいとそっぽを向くと、ウサギは「レポート頑張れよ」と、アリスの耳元で優しく囁いた。

「じゃ、ほんとに行ってくるから」

 そして時計を確認して、「やべ」と小さく漏らして出かけていった。

 時間に追われるウサギ。

 懐中時計を見ながら走る、白兎……?

 ウサギがいなくなってからしばらくしても、アリスの鼓動は落ち着かなかった。