この様子だと、話し合いはうまくいったと見える。

 ウサギと父ウサギが文句を言い合いながら、兄ウサギはそれを笑って見守る。

 そんな様子を眺めていると、ふと父ウサギと目が合ってしまった。

 思わず軽く会釈する。

 ここは自己紹介などしておいたほうがいいのだろうか。

 頭の中はパニックだ。

「ハッハッハッ。ちゃんとキレイなお姉ちゃんがいるじゃないか」

「父さん、あの子はお客さんだよ」

「俺の女だっつーの。指一本でも触れたら追い出すからな」

 ウサギがカウンターの奥で何か作業をしながら冷たい視線を送る。

 アヤはクスクス笑いながら二人にビールを出した。

「いやいや、啓介の。ほほう、どうも。父です」

「え、あの。有栖川です……」

 求められるままに握手を交わす。

 あまりウサギと似ていない。

 どうやらウサギは母ウサギ似らしい。

「げ、コラ! さわんなって言っただろ!」

「お前が選んだにしてはいいお嬢さんじゃないか」

「余計なこと言うんじゃねーよ、クソオヤジ。追い出すぞ」