アリスとウサギ


「笑うなよ。年もそうだし店もそうだし、その上御曹司だとか勘当されてるとか、そんな面倒な男だと思われたくなかったんだよ」

「だから全部自分からは言わなかったんだ」

「直人とか熊谷にチクられたけどな」

 むすっと唇を尖らせているウサギが、少し幼く見える。

 なんだか可愛らしくなってきて、アリスは笑いを抑えられなくなった。

「笑うなよ」

「だって……なんか。おかしくなっちゃって」

「何だよそれ」

 笑うアリスに拗ねるウサギ。

 日はだんだん落ちてきて、部屋もそれに合わせて暗くなった。

 笑いが落ち着いたアリスは、バッグを持って立ち上がる。

「暗くなったし、帰ろうかな」

 ウサギは驚いた顔をしてアリスを見上げる。

「ああ、うん。送ろうか?」

「じゃあ、お願いしようかな。あんたの車、乗ってみたかったし」

 ウサギは苦笑いして、衣裳部屋へジャケットを羽織りに行った。