アリスとウサギ


 額が触れ合った。

 顔が近すぎて、もう表情なんて見ることができない。

 鼓動とか、顔の熱とか、すべてがウサギに伝わっているようで落ち着かない。

 それでもアリスはゆっくりと言葉を発する。

「でも、もういいのよ。知りたかったことは全部わかったもん」

「ほんとに全部か?」

「うん」

 頷いた拍子に額は離れ、切ない顔をしたウサギの顔が目に入った。

 ウサギのくせに、そんな顔しないでよ……。

 アリスは座る体勢を整えてゆっくり語りだす。

「あたしね、結構無理してたの」

「無理?」

「うん。あんたの前で、イイ女ぶってたっていうか」

 自嘲の笑みは彼にどう映っているだろうか。

「そういうことなら、俺も無理してたかもな」

「あんたが?」

「うん。できるだけ普通の人ぶってた」

「普通の人って、あはは、何それ」

 全然普通じゃなかったじゃない。