アリスとウサギ


 マフラーを返しに来ただけのはずなのに、この数時間で状況ががらりと変わってしまった。

 修羅場を二つも迎えるなんてわかっていたら、わざわざ今日を選ばなかったのに。

 ウサギの実家のことがわかった代わりに、自分がファミレスを辞めた理由もおおかたバレてしまった。

 幸か不幸かお互いに未練があることも、どうやら認めざるを得ない。

 これから解決すべきなのは、二人のこれからのことだ。

「アリス」

 ウサギはアリスの隣に腰を下ろし、俯く顔を両手で強制的に上げる。

 整ったウサギの顔。

 ゆっくり動いた喉仏。

 心を震わせるハスキーボイス。

 この厄介な男と、これから一体どう接していけばいいというのか。

「何で隠してたんだよ。あいつとマヤのこと」

「言う必要がないと思ったのよ」

「どうして?」

「その質問、そっくりそのまま返してやる」

「は?」

「家のこと、隠してたじゃない」

「……そうだな」