アリスとウサギ


「ねえ、啓介。その子のどこがいいんだか知らないけど、そんなに好きならちゃんと安心させてあげたら?」

「安心って、俺たちは別に……」

「ホントはわかってんでしょ? お互いの気持ち」

 口をつぐんだウサギ。

 愛羅のタバコのにおいがアリスの方までやってきた。

「あたしとマヤちゃん、啓介を取り返したくて、その子のバイト先に通ったの」

「通った?」

「ええ。啓介と別れてって、話をするためにね」

「……そうか」

「最初の日だったかしら。マヤちゃんキレちゃって、その子にお冷の水、引っかけちゃったのよ」

 ウサギの顔がバッとアリスの方を向いた。

 アリスは彼から目を逸らしたまま、黙って俯く。

「お前、水浸しだった時って、もしかして……」

 黙秘を続けることも、肯定の意になる。

「洗い物だなんて、下らない嘘つくんじゃねーよ」

 ウサギは眉を下げてアリスの手を強く握った。