アリスとウサギ


「おい、アリス」

「よかったじゃん。渡り歩く前に女の方から来てくれて」

 そう言って脱いでいたジャケットを羽織り、バッグを抱える。

 虚しさと怒りでいっぱいだ。

「じゃあね」

「ちょっと待てって」

 立ち去ろうとしたアリスをウサギは引き止める。

 これ以上惨めな思い、させないで……。

 アリスは泣きそうになるのを気合いで堪えた。

 靴を履こうとしたとき、ちょうどドアベルが鳴った。

 ドアを開けたのはアリスだ。

「あら、別れたんじゃなかったかしら」

 開口一番にそう言ってのけた愛羅は、今日もキレイに化粧が施されている。

「ええ。おかげさまで。マヤさんの水のおかげで目が覚めたんです」

「あらそう。じゃあ今日はどうしてここに?」

「借りていたものを返しに来ただけですから。ご心配なく」

 きっとマンガなんかで読むときは、視線のぶつかるところに火花でも散っていることだろう。