コーヒーを入れたカップをテーブルへ置く。
ウサギを見るとやっぱり疲れた顔をしていた。
「てっきり女の家を渡り歩いてるかと思ったのに、店に寝泊りしてるなんて意外だった」
「できるもんなら渡り歩きたいね」
こういう言葉を聞くと、またぐっと捻くれ精神が働く。
しかし心の反対側では、カップを掴む骨ばった指にちゃんと力が入っているのか不安になったりする。
意地と愛情の一騎打ち。
「ちゃんと食べて、ちゃんと休みなよ」
「だから今日は休んでんだろ。ま、どっと疲れる客が来たけど」
「あたしのこと?」
「バカ、熊谷だよ」
「ああ。でも安心してね。今日は女が来る前に帰るから」
精一杯の皮肉を込めてそう言うと、ウサギはため息をつきながらカップをテーブルに戻した。
「あれ以来女なんて入れてねーし」
「嘘ばっかり」
「嘘じゃない」



