アリスとウサギ


 アリスも本当は気付いている。

 ウサギも自分に未練があるのだと。

 しかし愛羅を抱いたという強烈な事実は、現場に居合わせただけに受け入れられない。

 おそらくその後も別の女たちとそういう風になっただろうし……。

 深い溝は、未練程度では埋められない。

「そういえばこの間、熊谷さんから家に帰ってないとか聞いたんだけど。どこ行ってたの?」

 どうせ女の部屋でも渡り歩いてたんだろう。

 そう思っていたが、返ってきたのは意外な答えだった。

「しばらく店に寝泊まりしてた。年末は忙しいんだよ。忘年会シーズンってやつ」

「そう。書き入れ時だもんね」

「そういうこと」

 疲れが溜まっているのではないだろうか。

 ちゃんと栄養のあるものを食べているだろうか。

 また倒れたりしないだろうか。

 店や大学のことはしっかりやるくせに、自分の健康管理は下手くそなウサギ。

 そういえば、少しやつれた気がする。