アリスとウサギ


 泣き止んだばかりのアリスに、その両手を払う余裕などなかった。

「お前に泣いて頼まれたら、俺だって……」

「バッカじゃないの? そもそも協力なんてしないから」

「はあ……。お前はいつもいつも、どうしてそう俺の気持ちを汲んでくれないわけ?」

 アリスの両頬がぺちっと音を立てる。

 両肩に移動した手。

 それを支えにウサギはぐったりうなだれた。

「あんたの気持ちなんてわかんないし。今となっては知りたくもない」

「あーそうかよ。嫌われたもんだな、俺も」

「わかってるなら膝から下ろしてよ」

「はいはい。わかったよ。もう好きにしろ」

 ひょいと両脇から持ち上げられ、隣に座らされる。

 触れ合っていた部分がヒヤリ寂しい感覚がした。

 テーブルに置いてあったタバコに火を付けたウサギは、諦めたように毒を吐く。

「お前は俺を傷つける天才だよ」

 香ばしい煙のにおいが部屋に漂う。

 懐かしさが沁みた。