ウサギの胸で情けなく涙を流す。
軽く目じりを拭うと、アイライナーが落ちて指に移っていた。
ぽん、ぽん、ぽん……。
父親が子供をあやすようにゆっくり体を揺らしながら背中を叩くウサギ。
アリスが落ち着いたところで、頭上からかすれた声が降ってきた。
「俺、兄貴の居所、知ってるんだ」
「え……?」
「親父はどうか知らないけど、熊谷は恐らくそれに気付いてる」
「それならどうして教えてあげないの?」
「俺が手配したからな。兄貴の逃げ場所」
「ねえ、それ、どういうこと?」
胸を離れてウサギと顔を合わせると、ウサギは困ったように苦笑いした。
確かウサギは宇佐木家から勘当されて、関わりを持っていないんじゃなかったろうか。
わけがわからなくなったアリスは、ウサギの膝の上で思考を巡らせる。
ウサギはここで初めて、自らの家族を語った。
「俺、両親は気付いてないけど、兄貴とは仲良いんだよ」
「はあ?」
当たり前のことも、彼に於いては謎になる。



