アリスとウサギ


「ごめんね、ウサギ」

「は?」

「あたし、ウサギがこんなに壮絶な人生送ってるなんて想像もできなくて」

 今更謝罪なんて、と思ったが、気まずさゆえに沈黙が恐ろしく、口が勝手に喋りだす。

「もっとウサギのことを知りたかっただけなんだ。あたしが知らないのに他の女が知ってるのが嫌だったの」

「他の女? ああ、アヤか」

 ウサギはポリポリ頭を掻いて、アリスに一歩近づいた。

 驚いたアリスは離れようと試みたが、ウサギに右手を掴まれてしまい、そうもいかない。

「なあ、アリス。俺……」

「やめて」

 パッと手を払う。

 泣きそうになったのを堪えて思いっきり睨んでやった。

「他の女に触った手で触らないでよ」

 不甲斐なく声が震えた。

「お前、やっぱり鍵置いていった時……」

「そうよ。ここにいたの。途中でこっそり帰ったけど……あんなの、聞きたくなかった」