アリスとウサギ


 ウサギはアリスをかばうように前へ出る。

 ビクともしない熊谷は不敵な笑みを浮かべた。

 緊迫した空気に、アリスは逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

「社長にはそのように伝えます」

「そうしろ。そして他人を巻き込むな」

「……それも伝えておきます。一応」

 熊谷は一礼して部屋を出て行った。

 ドアが閉まる音と同時に、気まずい沈黙が二人の間を流れる。

 ウサギは部屋の鍵を閉め、ドアに手をついてため息を漏らした。

「あたしも、帰るよ」

 耐え切れずそう言うと、ウサギは振り返らずに応えた。

「もう暫くここにいろ。あいつが張ってるかもしれねーぞ」

「そう。じゃあそうする」

 アリスはリビングへ移動し、慣れたようにソファーに腰を下ろした。

 ウサギもリビングへやってきて、少し離れたところに倒れ込むように寝そべる。

 気まずい。

 かなり気まずい。

 借りたマフラーを返しに来ただけのはずなのに、一体これは何なんだ。