「我々に協力をしていただきたい」

「は?」

「もちろんタダでとは言いません。ご協力頂ければ50万円、成功すれば100万円、謝礼としてお支払いします。こちらはその誓約書です」

 交渉とはそういうことだったのか。

 金で人を釣る姿勢に神経を更に逆なでされ、アリスは書類を目の前で真っ二つに破いた。

 やれやれ、といった表情の熊谷。

「まあ、コピーはいくらでもありますから」

 と破られた書類を回収した。

「見たところあなたはまだ啓介さんにご執心でいらっしゃる」

「そんなことありません」

「しかもお二人は似たもの同士らしい」

 熊谷はコーヒーをまた一口飲んで笑った。

「良いことを教えてあげます」

「いいこと?」

「ええ。啓介さんはまだあなたのことを思っていらっしゃいますよ」

 根も葉もない。

 こちとら他の女を抱いた現場を見ているというのに。

「そんなわけないじゃないですか」