アリスとウサギ


 ワガママな会社と家族にふつふつと湧き上がる怒り。

 アリスはぐっと奥歯を噛み締める。

「ウサギはOKしないと思います」

「そうですね。取り合ってもくれません」

 そんなことわかってるよと言わんばかりの余裕。

 何か策があるというのか。

「社員の方の中から選べばいいじゃないですか」

「当社は役員全て宇佐木家で固めておりますので、そういうわけにもいかないんですよ」

「じゃあ、さっさとお兄さんを見つけてください」

「逃げ出した浩介さんに継がせる気はないそうです」

「何なのよ、それ。超自分勝手じゃない」

 熊谷は社長の意向を告げているだけだというのはわかっている。

 しかし気を抑えられないアリスはついつい声を荒げてしまう。

「そこで、有栖川さん」

「何ですか?」

「ご相談があるんです。というより、“交渉”させていただきたいのです」

 熊谷は新たに書類を一枚差し出してきた。