大学へ進学した際も、ご家族は誰も一人暮らしを選択された啓介さんに干渉しませんでした。
しかし、ある日、啓介さんがホストのバイトをやっていることが判明しましてね。
現社長は「宇佐木の名を汚すな」と、大変お怒りになり……。
話はもつれ、勘当同然で全ての金銭的援助は打ち切られ、一度大学を退学されました。
そして啓介さんが二十歳になったその日に、正式に書類を交わし、啓介さんは宇佐木家から籍を抜いたのです。
壮絶な宇佐木家の物語に、アリスは愕然とした。
英語が流暢な理由も、家族がいないと言った理由も判明。
ウサギは今、どんな思いで店を経営しているのだろう。
彼を思う気持ちはやや色が変わり、バッグに入っているマフラーにそっと触れると目が熱くなるのを感じた。
「ウサギのことを追い出したのに後を継いでほしいなんて。そんなの、社長さんのワガママじゃないですか」
アリスの言葉に、熊谷はフッと笑った。
「そうなんです。ですから、“交渉”したいんですよ」



