アリスとウサギ




 受講している講義が終わる時間に合わせて呼び出されたのは、街のとある喫茶店。

 UT建設本社ともほど近い。

 夕方、若干緊張しながら店に入ると、熊谷は既に店におり、ノートPCとにらめっこをしていた。

「こんにちは」

 アリスが声をかけると、彼はPCを閉じて作り笑顔を見せた。

 簡単に注文を済ませ、相手の出方をうかがう。

 熊谷は出来るオーラを放つように書類をアリスに差し出した。

「これはお返しいたします」

 ホチキスでまとめられたその書類は、どうやらアリスを調べたものらしい。

 名前、生年月日、学歴、家族構成などが書かれている。

 更にはどこで手に入れたのか顔写真まで載っている。

 鳥肌が立った。

「これは興信所などに依頼して調べさせたものです」

「興信所って……そこまでして、何をしたいんですか?」

「啓介さんの現状を知りたかった。それだけです」

「私は関係ないじゃないですか」

「いえ、あなたは彼の家に頻繁に出入りしていましたので……。もしかしたら婚約などしているかもしれないと思いまして」