アリスとウサギ


 ウサギは電話を切り、ちらりとアリスの方を振り向いた。

「なぁ、俺……」

「アリス~」

 何か言いかけたところに別の声で呼び声がかかる。

 条件反射でそちらを向くと、酔っぱらった男子が後ろからアリスに抱きついた。

「ちょっと、やめてよ」

「アリス~」

 男子はアリスを呼びながら髪に頬ずりをする。

 アリスが体を捩っても簡単には離れない。

 周りはヒューと彼をはやし立てる。

 困ったアリスは無意識にウサギを見た。

 ウサギに助けて欲しい。

 やめろよって、冗談混じりでも良いから。

 しかし、アリスの気持ちとは裏腹に、ウサギはぷいと目を逸らした。

 諦めによって体から力が抜けたのがわかった。

「ほーら、アリスが困ってるじゃない」

「いいじゃんかよー」

 抱きついていた男子を引き離してくれたのは、ゼミのリーダー格の女子。

 アリスは直後、体調が優れないことを理由に二次会の参加を辞退した。