アリスとウサギ


 初ゼミのメンバーは二人が付き合っていたことを知らない。

 ウサギを取り巻く人たちは各々慰めるような、でもからかうような、冗談混じりの言葉を思い思いにかけているようだ。

「お前も振られることがあるんだな」

「うるせーな。素直に振られた俺を慰めろよ」

「あはは。でもウサギ君なら他にも女がたくさんいるんでしょ?」

 慰めてほしいのはこちらの方だというのに。

 癒えていない傷をえぐるのはやめてほしい。

「じゃー俺がアリスを狙おうかな」

 冗談ではあるだろうが、ウサギの横に座っていた男子がこのような言葉を発した。

 意識していたアリスも思わず目を向けてしまう。

 その結果タバコを吸っているウサギと目が合ってしまった。

 ふと目を逸らす。

 アリスがウサギの答えを気にしているのはバレたも同然だ。

「好きにしろ」

 枯れた声で低くそう告げたウサギ。

 アリスは心の中で落胆した。