アリスとウサギ


 無理に笑ってみても、涙は止まらなかった。

 いくら自分を納得させようとしても、苦しさは解消できなかった。

 彼とのことをなかったことにしようと思っても、手に握った鍵が短い二人の歴史を物語っていた。

「一ヶ月ちょっとだって。はは、最短記録」

 目から鍵へ、ポタリと垂れた雫は生暖い。

 バッグからウサギの部屋の鍵を取り出す。

「返さなきゃ……」

 名残惜しい。

「あたしの荷物も、持って帰らなきゃ」

 まだ愛しい。

 自分を落ち着かせようと深呼吸をすると、はっきりとサムライが香る。

 涙を拭くためにティッシュに手を伸ばすと、求人情報誌が目に入った。

 愛羅とマヤに笑われたような気がした。

 アリスは情報誌を破ってしまおうとしたが、厚みがあるため全く破れない。

 そんな下らないことで、更に敗北感を覚える。

 結局くるっと丸めてゴミ箱にポイ。

 表紙のモデルの笑顔が歪んでいる。