アリスとウサギ


 ウサギはきっと気付いている。

 これから触れられたくない部分の話をしようとしていることに。

「あたし、あんたの何?」

「は? 何言って……」

「ショックだったの。何でも隠されるのが」

 ウサギは下を眺めたまま頬杖を付いて黙る。

 アリスは決して彼から視線を外さなかった。

「熊谷さんのことはあたしも名前と顔を知られたりしてて、関係ないことじゃないのに」

 ウサギは斜めに視線をずらし、手に持っていた何かをコトリと床に置いた。

「あいつのことは、気にしなくていい。何も心配すんな」

 視線を外したまま言われても、安心できるわけがない。

「気になるのよ。だから、さっきネットでちょっと調べてみたの。UT建設って……」

「俺には関係ない」

「でも、社長さんの名前――……」

「関係ないっつってんだろ!」