アリスとウサギ




 午前3時過ぎ、アリスはウサギが戸を開けた音で目を覚ました。

 明かりが点くと、目が慣れるまで布団にくるまり、もがく。

「アリス」

 ウサギの呼び声はいつものように重く響く。

 やっと光に目が慣れた時、ウサギは眉間に皺を寄せて脇に座っていた。

「ウサギ……」

 相変わらず整った顔に夜の香りをまとったスーツがよく似合っている。

「どうして何も言わずに帰ったんだ?」

「どうしてって……」

 拗ねました、なんて言えない。

 ウサギはスーツのままあぐらをかき、目の前で悲しい顔をしている。

「結構ショックだったぞ。飯食うのも、ずっと二人だったし。何か用事ができたならメールでも……」

「違うのよ」

 ウサギの言葉を遮って絞り出した声は微かに震えた。

 ん……と息を漏らして黙ったウサギ。

 視線を落とし自らの手を見ているようだ。

 何かを握っているようだが、ベッドの縁に遮られておりこの体勢ではアリスの視界に入らない。