アリスとウサギ


 不満はたくさんある。

 だけど、面倒な女だと思われたくないから言わない。

 恋人同士らしいデートなんかもしたことないが、我慢。

 見たことも乗ったこともないが、車を持っていることにも気付いてる。

 ウサギは何も教えてくれない。

 知りたい気持ちは抑えてきた。

 その方が、イイ女だと思うから。

 住宅街の乾いた冷たい風に吹かれ、アリスは気付かされた。

 ウサギに素を見せて欲しいと願いながら、自分も随分繕っていたのだと。

 いつかアヤに二人は似ていると言われた。

 こんなところまで、似なくていい。

 お互いがお互いのために仮面をかぶっているなんて、とんだ張りぼてカップルだ。

 虚しさが増して寒さが沁みた。

 自分の部屋に到着すると、静かな中に携帯が震える音が響いている。

 バッグから取り出すと、早苗だった。

 ウサギからの連絡はない。

 虚しさは、更に増す。