アリスとウサギ


 エレベーターの中で涙が溢れた。

 悲しいというより、悔しい。

 そして、腹が立つ。

 ハンドタオルで目頭を押さえながらエレベーターを飛び出すと、外はもう暗くなって冷たい風が吹いていた。

 ウサギに何も言わずに部屋を飛び出してしまった。

 怒るだろうか。

 心配するだろうか。

 それとも、呆れるだろうか。

 今まで、いささか無理をしてきたところがある。

 あんなウサギだから、かなりイイ女のふりをしてきた。

 大人ぶってた。

 女の匂いがしても仕事のせいだと飲み込んで。

 愛羅とマヤの件も飲み込んで。

 女の匂いがすれば、本当は問いつめたい。

 嫌がらせを受けたら、本当は慰めてもらいたい。

「俺が守るから、大丈夫だよ」

 くらい言われたい。

 だけどそんな女、ウサギには似合わない。

 あいつの彼女である限り、イイ女でいたい。