触れてはいけない……触れさせてはくれないウサギの一部。
あるいは、アリスとウサギの間に立ちはだかる壁。
それが目に見えたような気がして、アリスはその場で両膝をついた。
ねぇ、ウサギ。
彼女って何だろう。
私ってあんたの何だろう。
あんたの中身が見たい。
私用に繕ったウサギじゃなくて、素のウサギが見たいの。
これ以上近づけない?
今より深い関係にはなれないの?
これからもずっと、私は週に何度か家事を任されるだけ?
それって……家政婦じゃない。
アリスは煮物と味噌汁を器によそい、テーブルに置いた。
ゆらゆらと湯気を放つ二つを眺めると、自分がすごく惨めな気がした。
寝室ではまだウサギの怒った声が聞こえる。
アリスはゴミ箱の潰れた名刺を回収し、バッグの中に入れた。
そして立ち上がり、マンションを出る。



