アリスとウサギ


 今は従業員のアヤ。

 どうやら悪友の直人。

 愛羅やマヤなどの女たち。

 ウサギに関わってきた人々と向き合ったとき、自分は逃げ出さずにどっしり構えていられるだろうか。

 ちゃんと受け入れられるだろうか。

 何より心配なのは、ウサギの心を繋ぎ止められるかどうかだ。

 チャンスはあったのに手を出してこないウサギに不安を感じる。

 でもきっと、すぐに手を出してこられても「捨てられるのでは?」と不安を感じたと思う。

 濃度の高いため息が部屋に舞う。

 思いの外スムーズにスタートした彼との生活は、予想以上にトゲの多い茨の道なのかもしれない。

「啓介」

 彼がたまに奈々子と呼ぶみたいに、ぽつり名前を呟いてみた。

 もちろんどこからも反応はない。

 アリスは込み上げた愛しさと憎たらしさを抑え、再び眠りに就いた。