アリスとウサギ


「それと、もう一人」

「マヤって人ですか?」

「あ……、知ってるんだ。マヤとは一回しかやってないらしいんだけど、こいつも啓介にはご執心でさ」

「そうみたいですね」

「気をつけてね、っていう話だったんだけど、もう遅かったみたいだね」

「……はい」

 直人は残念そうにため息をつく。

「何かされなかった?」

 アリスは少し迷って、

「少し話をしただけです」

 とだけ答えた。

「それならいいけど」

「ご心配かけてすみません。あ、直人さん」

「なに?」

「ウサギには、二人が私に会いに来たこと言わないでください」

「え?」

「余計な心配かけたくないんで」

 フッと笑いを漏らした彼は、

「わかったよ。風邪、お大事にね」

 という言葉をくれてから仕事へと戻った。