「俺がまだ学生の時の話だけどね。まぁ、啓介はそこで金貯めて、今じゃ店を二件も構えてるってわけよ」
「なるほど……」
「客にキャバ嬢とかそこそこいたんだけどさ、その中に愛羅って子がいるんだ」
「知ってます。その人」
「啓介との関係も?」
「……大体は」
「じゃあ話は早い。その愛羅って女、啓介の遊び相手の中じゃ一番付き合いが長くてさ。どこから仕入れたのかアリスちゃんの存在を知ってるわけよ」
「ああ、そうですね。バイト先に来ました」
「げ、マジ?」
あちゃー、という声のトーン。
その裏でバスのアナウンスが微かに聞こえた。
「一応愛羅が啓介のファンクラブ会長みたいなもんで、他の遊び相手とかも全部把握してるくらい啓介に熱心なんだ」
アリスは「共有してる」という台詞を思い出した。
まるで「私が共有してあげてるのよ」という感じの愛羅の表情は、伊達ではないらしい。



