アリスとウサギ


「じゃあ俺、一旦家に戻って大学行くから。仕事前にまた寄るわ」

 着てきたスーツを着直してアリスに預かったレポートをバッグにしまい、立ち上がったウサギ。

 ベッドに寝そべりながら見上げると、彼がすごく大きく見えた。

「あ、ちょっと待って」

 アリスは思い出してベッドから飛び起きる。

「あ、コラ」

 ウサギはまた押し戻そうとしたが、アリスはベッドから降りずに自分のバッグを引っ張った。

「はい、これ」

 手渡したのは、鍵。

 無論アリスの部屋のものだ。

 ウサギは目を丸くしてそれを見つめた。

「そんな顔しないでよ」

「いつの間に……」

「昨日学校からの帰りに作ったの」

「はは、そうか」

 力なく笑ったウサギはギュッと鍵を握りしめる。

「こういうのは自分の男に渡すものでしょう?」

 先日の彼の言葉を拝借すると、返事は軽いキスで帰ってきた。