「ダメ!」
翌朝、力強く突っぱねられ、アリスは頬を膨らませた。
「これくらい大丈夫よ」
「ダメっつったらダメ」
ウサギが水戸黄門の印籠よろしく突きつけてきたのは、虚しくも「37.8℃」と表示された体温計。
アリスがそれでも講義に出ると言うからウサギが反対しているのだ。
マヤに負けた気がして、熱を出したのが氷水のせいだとは認めたくない。
しかしそれ以外に心当たりは見つからないから、熱などないと思い込もうとしたのに。
「微熱じゃないの」
「どこが。もうすぐ8度じゃねーか」
「出さなきゃいけないレポートもあるし、ほら、初ゼミのやつとか」
「そんなの俺が出してきてやるよ」
起き上がってはパンツ姿のウサギに押し戻されるというのを、もう何度繰り返しただろうか。
結局アリスは講義を休むことにした。



