アリスとウサギ


「アリス、ちょっと顔色悪いぞ」

「夜勤明けだから。寝不足でしょ」

「今日、二限からだろ? 大丈夫かよ」

 声が近いと思ったら、ウサギはすぐ後ろにいた。

 背後から手が伸びてきて、カチッとコンロの火を消す。

 その手はスッとアリスの額へ。

「熱い。風邪か?」

「違う」

 少し強気に言った。

 マヤの放った氷水に屈したくなかった。

 しかしウサギはアリスを引っ張り、ベッドに座らせる。

「さっさと着替えろ。もう寝るぞ」

「え?」

 何も考えていなかったが、ここには部屋が一つしかない。

 着替えるにもウサギの視線を逃れる術はない。

「今更恥ずかしがるなよ」

「だって、なんか」

「だってじゃねーって」

 ウサギはアリスのジャケットをスルッと脱がす。

「自分で着替えるから」

 アリスはウサギに背を向け、ベッドに放置していた部屋着に着替えた。