アリスとウサギ


 タクシーに乗って帰宅したのはアリスの部屋。

 ウサギを招き入れるのはこれが初めてだ。

 彼の広い部屋に比べ、アリスの部屋はごく一般的なアパート。

 少し気が引けたりもする。

「狭いけど適当に座ってて。あ、灰皿はないから。室内禁煙ね」

 そう言ってアリスはやかんに火をかけた。

 ウサギは少し緊張した面もちでテーブルの前に腰を下ろした。

「女の部屋に入るのとか……何年ぶりだろ」

「はぁ? 散々女食っといて」

「大概俺の部屋だったからな」

「あっそ」

 付き合いたてのカップルにしては不謹慎な会話も当たり前のように交わす。

 恋愛初期のふわふわしたピンク色の空気は、この二人に限っては存在しない。

「くしゅん!」

 濡れた服を脱いでも、悪寒は治まらなかった。

 アリスは自分を暖めるようにコンロの熱を手に当てた。