アリスとウサギ


 それについては愛羅が補足をした。

「啓介はね、あたしたちの中じゃちょっとしたステータスなのよ。啓介とヤッた子は、みんなナンバー3以内に入れるの。啓介とするってことは、それくらいの女だってことなの」

 そんな夜の世界のジンクス、知ったことじゃない。

 しかし、彼女たちにとってはそれが死活問題であるかのような形相だ。

 テーブルを叩いた女もタバコに火を付け、煙をアリスに向かって吐く。

「共有してるけど、みんな本当は啓介の隣を狙ってるのよ。啓介はイイ男だから、女遊びしてても文句は言わないけど。誰とも付き合わないって言ってたのに、こんなレベルの低い女連れてきて彼女ですって言われても……ねぇ」

 確かにウサギが連れていた女はみんな美人だった。

 この二人だってそうだ。

 だけど、だからって「はいそうですか」と別れられるわけがない。

「そんなの、ウサギの自由じゃないですか」

 勇気を出して反論すると、

「ウサギ?」

「啓介の苗字よ」

「ああ、そんな名前だったっけ」

 なんていう会話を繰り広げる。