アリスとウサギ


 二人から呼び出しのチャイムがかかる。

「ご注文はお決まりですか?」

 そう尋ねたアリスに、初めにウサギが連れてきた女……名前はたしか、愛羅。

 彼女がタバコの煙を吹きかけた。

「注文?」

 フッともう一人の女と笑い合う。

 そして、

「啓介と別れてくんない?」

 と言った。

「あの、おっしゃってる意味が……」

 本当にわからなかったわけではない。

 バン! と、テーブルを叩いたのはもう一人の女だった。

「あたしたち、みんなで啓介を共有してたのよ」

「共有?」

「そう。啓介はみんなのものなの」

「みんなのって……」

 ものじゃないんだから、と言おうとしてやめた。

 口ごたえしてどうなる相手でもないと思ったのだ。