アリスとウサギ


 こういうことがあるのではないかと、覚悟はしていた。

 しかしこんなに早いとは。

 彼女はカメラを睨んだまま早く早くと言っているように、組んだ腕の中で指を動かしている。

「何って……。特に、何も」

 寝てましたとは何となく言えなかった。

「じゃあどうして啓介の部屋にいるのよ」

 どうしてと言われても。

 その「啓介」に連れてこられたのですが。

「ここにいるよう言われているので」

「ふーん。そう」

 意味深な笑みを浮かべた彼女は、

「啓介にまた来るって伝えておいて」

 と言って去っていった。

「お名前は?」

 というアリスの声は、恐らく届いていない。

 見たことのある女だった。

 恐らくファミレスに連れてきたうちの一人だろう。

 これからこういうことが頻発するのだろうか。

 気が重い。