アリスとウサギ


 隣にいるウサギ。

 至近距離でこんな顔を見られたくなくて、アリスはプイッと顔を背けた。

「当たり前でしょ」

 いつもの調子で答え、溜まった涙を引っ込めた。

 ウサギはははっと笑い、モリモリと腹に入れていく。

 ウサギとこの部屋に似合わない食卓。

 それでも美味しそうに食べる彼を見ていると、何とも言えない愛しさを感じた。

「ごちそうさま」

 アリスはまだ半分ほどしか食べ終わっていないというのに、ウサギは早くも完食。

 後ろでモソモソしているかと思えば、耳元で声が聞こえた。

「超美味かった」

 腕は腹に回され、後ろから抱かれている状態。

 ビクッと体を震わせると、それを押さえ込むかのように腕の締まりがきつくなった。

「ちょっと、あたしまだ食事中……」

 チュッ。

 ウサギの顔が近くて、文句も言えずに固まるアリス。

「なあ、結婚しねえ?」

「はあ?」

「俺もそろそろそういう年だし」