アリスとウサギ


 さっきまで鍋でグツグツしていた肉じゃがが、ゆっくりとウサギの口の中に入る。

 きっと普段はもっといいものを食べているだろうし、それなりに舌も肥えているはず。

 何度も何度も味見をして、自分が納得いくまで微調整をした。

 それでも美味いと言ってくれるかどうか、自信がない。

 アリスは茶碗と箸を持ったまま、視線はウサギの顔に釘付けだ。

 その顔が、ふとこちらを向いた。

 アリスの緊張はピークに達する。

 ウサギは器と箸を置いて、アリスに手を伸ばしてきた。

「なんつー顔してんだよ」

 ちょん、と眉間を突かれる。

「え……?」

「すげー怖い顔してるぞ。毒でも盛ったか?」

「まさか」

 彼の冗談に、顔が少し緩む。

「そんなに心配しなくても、美味いから」

 美味い……今、確かにそう聞こえた。

 安心とか喜びが一気に込み上がってきて、アリスの目が熱くなる。