アリスとウサギ


 料理は得意ではない。

 しかし、苦手でもない。

 肉じゃがと、味噌汁と、白飯。

 これくらいなら、レシピを見ずとも作ることができる。

 肉じゃがの鍋に醤油とみりんを入れた頃、寝室のドアが開いた。

「すげーいい匂いする」

 自然な笑顔にきゅんとしてしまう。

 そんな顔を見せたくなくて、アリスは再び鍋の方に集中した。

「あと15分くらいでできるから」

「マジ? じゃあ俺着替えてくる」

 後ろを通過して衣裳部屋へと向かったウサギ。

 これが毎日続くのだろうか。

 直後、炊飯器がピッピと炊けたことを知らせてくれた。

 味噌汁の濃さもOK。

 肉じゃがはもう少し煮込む必要がありそうだ。

 食器も準備したし……ああ、なんか彼氏とかいうよりいきなり結婚した気分。

 いや、やっぱり大きい子供を持った気分かも。