そう聞かれると自信が無くなった。

 もしかしたら、あの日のことは夢だったんじゃないだろうか。

 考えてみたらおかしな展開だ。

 ケンカをしてキレた自分は病室を出て……階段の前まで進んだ。

 問題はそこからだ。

 ムカつくとか言われながら、抱きしめられて、引き止められて。

 明らかにおかしいじゃないか。

 台詞と行動があべこべだ。

「実は妄想だったとかいうオチだったらどうしよう……」

 パニックになったアリスは必死にその時の記憶を組み立て直す。

 しかし何度組み立ててもウサギは文句を言いながら自分を抱きしめるのだ。

「直接本人に聞けば?」

「え?」

 早苗の親指が示す先を見ると、眠そうにおにぎりをかじるウサギが教室に入ってきていた。

 彼もアリスに気づき、サッと手を上げる。

 アリスは恥ずかしくなり、顔を赤くして俯いた。