「え? どこがですか?」

「意地っ張りであまのじゃくなところよ」

 まるで小さい子供を眺めるように微笑むアヤの顔を見届けて、アリスはバーを出た。

 電球の埋められた階段を慎重に降りると、秋風に巻き髪が揺れる。

 アヤはアリスとウサギが似ていると言った。

 意地っ張りであまのじゃくだと言った。

 確かに自分は意地っ張りであまのじゃくかもしれない。

 しかしウサギには全く当てはまらないと思う。

 いや、ウサギが特別な表情をする相手だ。

 自分なんかよりずっとずっとウサギのことを知っているのかもしれないけど。

 アリスは小さく息を吐いて、静かになりつつあるネオン街をゆっくりと歩きだした。

 コツコツコツ……

 ビルの狭間にヒール音が響く。

 ネオン街のメインストリートであるネオン通りも、深夜2時を過ぎればやや哀愁が漂うようだ。