「ほら、お残しは許しまへんえ。ハルさん、ちゃんと全部食べてな?」
目の前に差し出されたのは、麦の混じった白米と、具のほとんどない薄い味噌汁、それから大根の葉を炒めた小さなお皿だった。
サクラが切り盛りする『ひまわり食堂』の奥の座敷で、僕は慣れない箸の進め方に少しだけ戸惑っていた。
「あ、ごめん。残すつもりはないんだ。ただ……」
「ただ?」
「ううん、なんでもない。いただきます」
口に運んだお米は、現代のふっくらとしたコシヒカリとはまるで違って、パサパサしていて少し硬い。
それでも、サクラが一生懸命に火を起こし、汗を流しながら作ってくれたご飯だ。
胸の奥にじわりと温かいものが広がり、気づけば箸が止まらなくなっていた。
「おいしい。すごく、優しい味がする」
「ふふ、よかった! あなた、本当に変な格好で倒れてたから心配したんやから。服も見たことないピカピカした生地やし、どこから来たの?」
サクラは僕が着ていたナイロン製のマウンテンパーカーの袖を、不思議そうにつんつんと指で突いた。
現代からタイムスリップしてきたなんて、本当のことを言っても信じてもらえるはずがない。
僕は咄嗟に「記憶を失くして、気づいたら丘に倒れていた」と嘘をついた。
自分の命が残り1年だということも、もちろん秘密のままだ。
「そっか……身寄りがおらへんのなら、しばらくうちを手伝って。お父ちゃんも兵隊さんに行ってしもて、私一人やと人手が足りんかったから、ちょうどよかったわ」
サクラはそう言って、太陽のように屈託のない笑顔を見せた。
その笑顔があまりにも眩しくて、僕は少しだけ胸が痛む。
目の前に差し出されたのは、麦の混じった白米と、具のほとんどない薄い味噌汁、それから大根の葉を炒めた小さなお皿だった。
サクラが切り盛りする『ひまわり食堂』の奥の座敷で、僕は慣れない箸の進め方に少しだけ戸惑っていた。
「あ、ごめん。残すつもりはないんだ。ただ……」
「ただ?」
「ううん、なんでもない。いただきます」
口に運んだお米は、現代のふっくらとしたコシヒカリとはまるで違って、パサパサしていて少し硬い。
それでも、サクラが一生懸命に火を起こし、汗を流しながら作ってくれたご飯だ。
胸の奥にじわりと温かいものが広がり、気づけば箸が止まらなくなっていた。
「おいしい。すごく、優しい味がする」
「ふふ、よかった! あなた、本当に変な格好で倒れてたから心配したんやから。服も見たことないピカピカした生地やし、どこから来たの?」
サクラは僕が着ていたナイロン製のマウンテンパーカーの袖を、不思議そうにつんつんと指で突いた。
現代からタイムスリップしてきたなんて、本当のことを言っても信じてもらえるはずがない。
僕は咄嗟に「記憶を失くして、気づいたら丘に倒れていた」と嘘をついた。
自分の命が残り1年だということも、もちろん秘密のままだ。
「そっか……身寄りがおらへんのなら、しばらくうちを手伝って。お父ちゃんも兵隊さんに行ってしもて、私一人やと人手が足りんかったから、ちょうどよかったわ」
サクラはそう言って、太陽のように屈託のない笑顔を見せた。
その笑顔があまりにも眩しくて、僕は少しだけ胸が痛む。
