私――江ノ宮愛莉。スターライト学園アイドル科中等部の一年生!
私の通う学校は数々のスクールアイドルを生み出していった日本有数の名門校。
普通科とアイドル科に分けられており、授業内容も違う。国数理社英などの五教科に加え、歌や踊りのレッスンの時間もある。
特別授業では『課外学習』や『服飾製作』などの楽しい授業も盛りだくさん!
そして半年後の年明けには『全国発表会』と呼ばれる日本一のアイドルを決める発表会がある。
そこで優勝した人には支援金がもらえるから頑張らなくちゃ!
それなのに―――
「何で私だけなの!?」
ガランとした体育館。
約三十人のクラスメイト達は、普段の授業や歌・ダンスの個人レッスンには真面目に参加している。
技術も高くて、誰もが即戦力レベル。
それなのに、いざ『みんなで集まってひとつのグループとして練習しよう』となると、全員がなんだかんだと理由をつけて姿を消してしまう。
個人プレーばかりで、チームとしての一体感はゼロ。
(もうやだ、帰ろ……)
トボトボとカバンを持って寮に向かおうとすると、頭上から声が聞こえて来た。
「悩める子羊を救うのが神父の役目。君の悩み、僕に聞かせてくれないか?とうっ!」
「…………」
頭上からの唐突な叫び声に見上げると、キャットウォークから、黒いローブを羽織った謎の人物が飛び降りてきた。
「え?」
ドサッ!
目の前に着地したのは、黒いローブを身にまとった男の子だった。
私は落ち着いてスマホを取り出し、管理会社に電話を掛けた。
「あ、もしもし。今、学校に不審者が―――」
「待て待て待て!早まるな!!クラスメイトを通報するな!そうだ、ハッタリだろう?うん、ハッタリ。あまり学校に顔を出していなかったからといって忘れられてないよな、僕」
男の子は必死の形相で両手をぶんぶんと振りながら、冷や汗びっしょりで詰め寄ってくる。
「そうだ、学生証!学生証を見れば分かるはず……あれぇ?どこやったっけ」
焦ってポケットやカバンの底をゴソゴソと探る男の子。
ようやく見つけ出したカードを「ほら! これ!」と突き出してきた。
愛莉はスマホを耳に当てたまま、慎重にそのカードを覗き込む。
そこには確かにスターライト学園の校章と、彼の写真、そして『アイドル科中等部一年・神楽坂レン』という名前が刻まれていた。
「……クラスメイトだった」
「 ほら、入学式で一番後ろの席にいて、翌日からパタリと授業に来なくなった……あの伝説の不登校児、神楽坂くんだよ!」
「はぁ……」
「ようやく停学期間が終わったから顔を出したら覚えられていなかったなんて……」
「停学って……何したの?」
「聞きたい?」
「やっぱ良いです」
「そこは聞いてよ〜」
✳✳✳
「はぁ〜……」
「愛莉ちゃん、どうしたの?」
カチャカチャと夜ご飯を食べていると、同じクラスの志保ちゃんが声をかけてきた。
「志保ちゃ〜ん、何で来なかったのー?」
「あはは、ごめんねぇ。今日は委員会があってー……」
「なら仕方ないか……」
トレイの上のハンバーグをフォークで突きながら、力なく息を吐いた。
「今日も愛莉ちゃん一人で練習してたの?」
「うん……」
「すごいねぇ」
「すごくないよ!一人で踊ってても寂しいだけだもん!」
それからワイワイお喋りをしていると、「前、座って良い?」とお盆を持った木蓮とスミレが歩いて来た。
「うん。良いよ〜」
「ありがとう」
「あざす!」
「木蓮ちゃん、スミレちゃんもいらっしゃい」
志保ちゃんが微笑みながら席を詰めると、二人は私達の向かい側に腰を下ろした。
クールでストイックなダンスの名手・木蓮は、栄養バランスが完璧に計算された定食の小鉢を几帳面に並べ直す。
一方、クラスのムードメーカーでボーイッシュなスミレは、大盛りのご飯を口いっぱいに頬張りながら私の顔を覗き込んできた。
「愛莉、なんかテンション低くね?体育館で一人で筋トレでもやりすぎたか?」
「違うよー……。ダンスの練習、みんなで合わせたいなって思ってたのに、誰も来なかったからだよ」
うなだれると、木蓮は箸を止めてまっすぐ私を見つめた。
「練習なら、個人レッスンで十分でしょう。今の段階で下手に合わせようとしても、癖が干渉し合って効率が悪いわ。まずは個人の精度を極限まで高めるのが先決よ」
「グッ……」
「木蓮、やめろ!愛莉のライフはもうゼロだ」
「生き返れ〜生き返れ〜。木蓮ちゃんの名のもとに」
志保ちゃんが私の頭に手をかざす。
「私はアンダーテイカーじゃないわよ……」
冷静な突っ込みを入れつつも、木蓮はポンポンと優しく私の肩を軽く叩いた。
「でも、本気で言ってるの。あなたの良さはまっすぐで真っ白なところ。周りに合わせようとして小さくまとまる必要はないわ」
「愛莉ちゃんののダンス、見てて元気になるよ」
「そうそう!急に旗体操しだした時は爆笑したわ〜」
「スミレ!慰める気ある!?」
「ない!」
二パッと元気に答えるスミレ。
「……特訓、付き合ってあげても良いわよ」
小鉢を食べ終えた木蓮が真面目に言った。
「「え?」」
私と志保は目を合わせる。
「ただし、途中で音を上げてもやめないわよ」
「望むところだよ!ありがとう、木蓮!」
私はパッと表情を明るくして身を乗り出した。
✳✳✳
「えーっと、これは何?」
夜ご飯のあと、グランドに呼び出された私達は木蓮が用意した物を見て固まった。
「見ての通り、コートローラーよ」
「え、あ、うん。それは分かる」
体育倉庫から持ってきたであろうコートローラーが二つ。
「グランドでもならすの?」
志保ちゃんが首を傾げる。
「これを使ってグランド一周」
「「え?」」
さっきスミレが『アタシ、明日提出の衣装課題まだ描けてねぇんだ』って逃げた理由はこれか!!
私の通う学校は数々のスクールアイドルを生み出していった日本有数の名門校。
普通科とアイドル科に分けられており、授業内容も違う。国数理社英などの五教科に加え、歌や踊りのレッスンの時間もある。
特別授業では『課外学習』や『服飾製作』などの楽しい授業も盛りだくさん!
そして半年後の年明けには『全国発表会』と呼ばれる日本一のアイドルを決める発表会がある。
そこで優勝した人には支援金がもらえるから頑張らなくちゃ!
それなのに―――
「何で私だけなの!?」
ガランとした体育館。
約三十人のクラスメイト達は、普段の授業や歌・ダンスの個人レッスンには真面目に参加している。
技術も高くて、誰もが即戦力レベル。
それなのに、いざ『みんなで集まってひとつのグループとして練習しよう』となると、全員がなんだかんだと理由をつけて姿を消してしまう。
個人プレーばかりで、チームとしての一体感はゼロ。
(もうやだ、帰ろ……)
トボトボとカバンを持って寮に向かおうとすると、頭上から声が聞こえて来た。
「悩める子羊を救うのが神父の役目。君の悩み、僕に聞かせてくれないか?とうっ!」
「…………」
頭上からの唐突な叫び声に見上げると、キャットウォークから、黒いローブを羽織った謎の人物が飛び降りてきた。
「え?」
ドサッ!
目の前に着地したのは、黒いローブを身にまとった男の子だった。
私は落ち着いてスマホを取り出し、管理会社に電話を掛けた。
「あ、もしもし。今、学校に不審者が―――」
「待て待て待て!早まるな!!クラスメイトを通報するな!そうだ、ハッタリだろう?うん、ハッタリ。あまり学校に顔を出していなかったからといって忘れられてないよな、僕」
男の子は必死の形相で両手をぶんぶんと振りながら、冷や汗びっしょりで詰め寄ってくる。
「そうだ、学生証!学生証を見れば分かるはず……あれぇ?どこやったっけ」
焦ってポケットやカバンの底をゴソゴソと探る男の子。
ようやく見つけ出したカードを「ほら! これ!」と突き出してきた。
愛莉はスマホを耳に当てたまま、慎重にそのカードを覗き込む。
そこには確かにスターライト学園の校章と、彼の写真、そして『アイドル科中等部一年・神楽坂レン』という名前が刻まれていた。
「……クラスメイトだった」
「 ほら、入学式で一番後ろの席にいて、翌日からパタリと授業に来なくなった……あの伝説の不登校児、神楽坂くんだよ!」
「はぁ……」
「ようやく停学期間が終わったから顔を出したら覚えられていなかったなんて……」
「停学って……何したの?」
「聞きたい?」
「やっぱ良いです」
「そこは聞いてよ〜」
✳✳✳
「はぁ〜……」
「愛莉ちゃん、どうしたの?」
カチャカチャと夜ご飯を食べていると、同じクラスの志保ちゃんが声をかけてきた。
「志保ちゃ〜ん、何で来なかったのー?」
「あはは、ごめんねぇ。今日は委員会があってー……」
「なら仕方ないか……」
トレイの上のハンバーグをフォークで突きながら、力なく息を吐いた。
「今日も愛莉ちゃん一人で練習してたの?」
「うん……」
「すごいねぇ」
「すごくないよ!一人で踊ってても寂しいだけだもん!」
それからワイワイお喋りをしていると、「前、座って良い?」とお盆を持った木蓮とスミレが歩いて来た。
「うん。良いよ〜」
「ありがとう」
「あざす!」
「木蓮ちゃん、スミレちゃんもいらっしゃい」
志保ちゃんが微笑みながら席を詰めると、二人は私達の向かい側に腰を下ろした。
クールでストイックなダンスの名手・木蓮は、栄養バランスが完璧に計算された定食の小鉢を几帳面に並べ直す。
一方、クラスのムードメーカーでボーイッシュなスミレは、大盛りのご飯を口いっぱいに頬張りながら私の顔を覗き込んできた。
「愛莉、なんかテンション低くね?体育館で一人で筋トレでもやりすぎたか?」
「違うよー……。ダンスの練習、みんなで合わせたいなって思ってたのに、誰も来なかったからだよ」
うなだれると、木蓮は箸を止めてまっすぐ私を見つめた。
「練習なら、個人レッスンで十分でしょう。今の段階で下手に合わせようとしても、癖が干渉し合って効率が悪いわ。まずは個人の精度を極限まで高めるのが先決よ」
「グッ……」
「木蓮、やめろ!愛莉のライフはもうゼロだ」
「生き返れ〜生き返れ〜。木蓮ちゃんの名のもとに」
志保ちゃんが私の頭に手をかざす。
「私はアンダーテイカーじゃないわよ……」
冷静な突っ込みを入れつつも、木蓮はポンポンと優しく私の肩を軽く叩いた。
「でも、本気で言ってるの。あなたの良さはまっすぐで真っ白なところ。周りに合わせようとして小さくまとまる必要はないわ」
「愛莉ちゃんののダンス、見てて元気になるよ」
「そうそう!急に旗体操しだした時は爆笑したわ〜」
「スミレ!慰める気ある!?」
「ない!」
二パッと元気に答えるスミレ。
「……特訓、付き合ってあげても良いわよ」
小鉢を食べ終えた木蓮が真面目に言った。
「「え?」」
私と志保は目を合わせる。
「ただし、途中で音を上げてもやめないわよ」
「望むところだよ!ありがとう、木蓮!」
私はパッと表情を明るくして身を乗り出した。
✳✳✳
「えーっと、これは何?」
夜ご飯のあと、グランドに呼び出された私達は木蓮が用意した物を見て固まった。
「見ての通り、コートローラーよ」
「え、あ、うん。それは分かる」
体育倉庫から持ってきたであろうコートローラーが二つ。
「グランドでもならすの?」
志保ちゃんが首を傾げる。
「これを使ってグランド一周」
「「え?」」
さっきスミレが『アタシ、明日提出の衣装課題まだ描けてねぇんだ』って逃げた理由はこれか!!



