朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 ランナは信じられない思いで三人の姿を見下ろすと、左から順に確認するようにして視線を右に流していく。

「う、そ……アサ様、ヒルくん、ヨル様……?」

 三人が別々の人間として目の前に存在している。三人は目を閉じて眠っているように見えるが、生気が全く感じられない。まるで血が通っていない人形のように。
 古の封印から解放されたのは三人の『体』のみ。魂が宿っていない抜け殻の状態だから当然だった。
 最初に動いたモニカは迷わずに一番左で眠るアサの横に両膝をついて座る。

「アサ様、お目覚めくださいませ」

 続いてランナも動くと、真ん中で眠るヒルの顔の横に座る。

「ヒルくん、起きて。もう起きる時間だよ」

 最後にポーラも一番右で眠るヨルの横で静かに腰を下ろす。

「ヨル様、もう目を開けても大丈夫。私が側にいるから」

 今、三人の悪魔の魂は、三人の聖女の体内にある。レッドリアの聖女たちは、ジョルノの悪魔たちに口付けて魂を体へと返すための儀式を行う。
 繋がった唇から送り込まれた悪魔の魂は本来の体へと宿る。抜け殻だった体の全身に熱い血が通い、肌に血色が戻り、心臓の鼓動が始まる。
 静かに呼吸を始めたアサは、愛に包まれた心臓の熱さで目を覚ました。瞼を開くと、愛妻の潤んだ碧眼が目に映る。

「モニカさん……」
「アサ様っ!!」

 モニカの瞳から落ちた涙の粒がアサの頬に落ちる。アサが上半身を起こすと、押し倒しそうな勢いでモニカが全身で抱きつく。
 言葉がなくてもアサには分かった。今、やっと自分は自分の体に魂を宿したのだと。以前よりも熱い魂は、モニカの愛を纏って朝日のように明るく輝いている。

「おはようございます。不思議ですね、目に映る全てが清々しくて美しい。この世界もモニカさんも」
「アサ様ったら、もう夕方ですわよ……それに世界も私も変わっていません。変わったのはアサ様の瞳の色ですわ」

 今のアサの瞳の色は悪魔の赤ではなく、モニカと同じ碧眼。朝の青空のような清々しいスカイブルーの瞳に生まれ変わっていた。