その頃、ジョルノ国の援軍の騎兵隊は神殿を目指して走っていた。神殿が目視できるほどに近付いた時に驚くべきものを目にする。
「あれは邪竜? 伝説の悪魔が復活したのか!?」
「それにしては神々しい……邪竜ではなく神竜だったのか?」
遠くを見つめる騎兵たちの目に映るのは、神殿よりも巨大な黒い竜。その体は半透明で、二対の翼を折り畳み、神殿を守るように包んで身を丸めている。
兵士たちは黒竜の姿に目を見張るのではなく目を奪われた。漆黒の体に纏う魔力には禍々しさを感じない。誰もが雄々しく美しい姿に魅了されてしまう。
ランナが瞼を開くと、そこはまだ暗黒の世界。闇に包まれてはいるがフワフワとした優しい空気を肌に感じる。
闇はやがてグレーへと薄まり透明度を増して、なんとか周囲の様子を認識できるほどに視界が晴れてきた。
辺りを見回すと、崩れ落ちた神殿の天井や柱の瓦礫に囲まれている。周囲に放たれた火は鎮火していて煙も立っていない。
「ポーラ姉さん! モニカ様! どこ!?」
ランナの呼びかけに応えるように、ランナの右手をモニカ、左手をポーラが握る。三人の王妃が手を繋いで横に並ぶ形になった。
三人は息を合わせるようにして同時に空を仰ぐ。天井が崩れ落ちた神殿の中で見上げれば青空が見えるはずだが、全ての景色には漆黒の色が混ざり合っている。
「温かいですわ。アサ様に包まれているみたい」
「この感じ、ヒルくんの温もりに似てる」
「不思議。ヨル様の息遣いと体温を感じるわ」
三人の王妃それぞれが三人格の魔力の温もりを感じ取る。そして今、三人は復活した悪魔の体に包まれて守られているのだと気付く。
封印から解き放たれた悪魔に魂は宿っていない。赤い眼を持つ黒竜は『三匹の悪魔』の思念が宿った仮の姿だった。
全身に感じる黒竜の魔力の温もりから、三匹の悪魔たちの記憶と感情が伝わってくる。三人の王妃たちは、ようやく物語の真実を知った。
(三匹の悪魔はエリス様を愛していた。だからエリス様は……)
遠い昔の聖女・エリスが三匹の悪魔の魂を体内に封印した理由。そして神殿に悪魔の体を封印した理由。その真実は物語とは違う。
(三匹の悪魔は巨大な邪竜ではなかった。魔力を持った三人の人間だったんだ)
アサルト、ヒルマ、ヨルデオ。ジョルノ国の三人の悪魔は、隣国レッドリアの聖女・エリスを取り合って争っていた。
聖なる国・レッドリアにとって悪魔は相容れぬ存在。レッドリア国王は、最強の聖女であるエリスを奪おうとする悪魔の三人を抹殺する命令を下す。
(エリス様は聖女として三人を殺すふりをして『死』から救いたかった。そして未来に繋げたのね)
三人の悪魔を救いたいと願ったエリスは体内に三人の魂を封印して、神殿に三人の体を封印した。
ジョルノの神殿とは、三人の悪魔の体を埋葬した『墓地』であり、祭壇は『墓標』だった。
エリスは神殿に邪竜を封印したと偽り、他人の手で封印が解かれないように守っていた。いつの日か、子孫の聖女たちが三人を救う事を願って。
「今こそ、私たちが三人を救う!!」
ランナ、ポーラ、モニカ。エリスの血と能力を受け継ぐ三人の聖女たちの声が重なる。
その声に同調するかのように、神殿を包んで空まで覆い尽くしていた黒竜の巨体が収縮していく。
ランナたちの前に降り立った小さな黒竜は翼を閉じると身を丸めて、黒い魔力の球体へと姿を変える。
その球体がさらに三つの球体に分かれて、それぞれが人の形を形成していく。そこに肌や髪、服などの色彩が浮かび上がる。
神殿の床には、アサ、ヒル、ヨルの三人が仰向けに並んで倒れていた。
「あれは邪竜? 伝説の悪魔が復活したのか!?」
「それにしては神々しい……邪竜ではなく神竜だったのか?」
遠くを見つめる騎兵たちの目に映るのは、神殿よりも巨大な黒い竜。その体は半透明で、二対の翼を折り畳み、神殿を守るように包んで身を丸めている。
兵士たちは黒竜の姿に目を見張るのではなく目を奪われた。漆黒の体に纏う魔力には禍々しさを感じない。誰もが雄々しく美しい姿に魅了されてしまう。
ランナが瞼を開くと、そこはまだ暗黒の世界。闇に包まれてはいるがフワフワとした優しい空気を肌に感じる。
闇はやがてグレーへと薄まり透明度を増して、なんとか周囲の様子を認識できるほどに視界が晴れてきた。
辺りを見回すと、崩れ落ちた神殿の天井や柱の瓦礫に囲まれている。周囲に放たれた火は鎮火していて煙も立っていない。
「ポーラ姉さん! モニカ様! どこ!?」
ランナの呼びかけに応えるように、ランナの右手をモニカ、左手をポーラが握る。三人の王妃が手を繋いで横に並ぶ形になった。
三人は息を合わせるようにして同時に空を仰ぐ。天井が崩れ落ちた神殿の中で見上げれば青空が見えるはずだが、全ての景色には漆黒の色が混ざり合っている。
「温かいですわ。アサ様に包まれているみたい」
「この感じ、ヒルくんの温もりに似てる」
「不思議。ヨル様の息遣いと体温を感じるわ」
三人の王妃それぞれが三人格の魔力の温もりを感じ取る。そして今、三人は復活した悪魔の体に包まれて守られているのだと気付く。
封印から解き放たれた悪魔に魂は宿っていない。赤い眼を持つ黒竜は『三匹の悪魔』の思念が宿った仮の姿だった。
全身に感じる黒竜の魔力の温もりから、三匹の悪魔たちの記憶と感情が伝わってくる。三人の王妃たちは、ようやく物語の真実を知った。
(三匹の悪魔はエリス様を愛していた。だからエリス様は……)
遠い昔の聖女・エリスが三匹の悪魔の魂を体内に封印した理由。そして神殿に悪魔の体を封印した理由。その真実は物語とは違う。
(三匹の悪魔は巨大な邪竜ではなかった。魔力を持った三人の人間だったんだ)
アサルト、ヒルマ、ヨルデオ。ジョルノ国の三人の悪魔は、隣国レッドリアの聖女・エリスを取り合って争っていた。
聖なる国・レッドリアにとって悪魔は相容れぬ存在。レッドリア国王は、最強の聖女であるエリスを奪おうとする悪魔の三人を抹殺する命令を下す。
(エリス様は聖女として三人を殺すふりをして『死』から救いたかった。そして未来に繋げたのね)
三人の悪魔を救いたいと願ったエリスは体内に三人の魂を封印して、神殿に三人の体を封印した。
ジョルノの神殿とは、三人の悪魔の体を埋葬した『墓地』であり、祭壇は『墓標』だった。
エリスは神殿に邪竜を封印したと偽り、他人の手で封印が解かれないように守っていた。いつの日か、子孫の聖女たちが三人を救う事を願って。
「今こそ、私たちが三人を救う!!」
ランナ、ポーラ、モニカ。エリスの血と能力を受け継ぐ三人の聖女たちの声が重なる。
その声に同調するかのように、神殿を包んで空まで覆い尽くしていた黒竜の巨体が収縮していく。
ランナたちの前に降り立った小さな黒竜は翼を閉じると身を丸めて、黒い魔力の球体へと姿を変える。
その球体がさらに三つの球体に分かれて、それぞれが人の形を形成していく。そこに肌や髪、服などの色彩が浮かび上がる。
神殿の床には、アサ、ヒル、ヨルの三人が仰向けに並んで倒れていた。



