祭壇の前では、背中に矢を受けたヨルが両膝をついて崩れ落ちる。
「ヨル様っ!!」
ポーラがヨルの体を支えようとするが力が足らずに、抱き合う形で一緒に床に座り込んでしまう。
ランナとモニカはヨルの背中側に回って傷口を確認する。出血は多くないものの、背中の中心から突き刺さった矢は胸まで貫通している。
治癒の能力を持つモニカが傷口に手をかざすが、ヨルが体を捩って拒絶した。
「構うな、朝の女」
ヨルは苦痛に顔を歪めながらも、モニカを睨みつける赤い瞳の炎は生気を失っていない。さらに強引に口角を上げて笑みを作る。
「どうせ、この体はもう不要だ。オレは悪魔の体を得るのだからな」
「バカ!!」
ヨルの言葉に被せるように放たれた怒声は、ランナではなくポーラの声だった。その気迫に驚いたモニカとランナの肩が跳ねてしまう。
そしてヨルも思わず黒い瞳を丸くしてポーラの顔を驚きの目で見返している。
「悪魔になろうとしないで! ヨル様は悪魔の魂に支配されているだけなのよ!」
「うるさい……オレは……最強の悪魔に……」
「いい加減に気付いて、ヨル様は悪魔じゃない!!」
ポーラの叫びと共に金色の瞳から涙が弾け飛ぶ。ポーラには分かっていた。神殿に封印されているのは悪魔ではない事に。
ヨルの孤独な時間に寄り添って愛し合ったからこそ、ポーラはヨルの全てを理解していた。
決して誰かを裏切った訳でもない。それを証明するためにポーラは祭壇を破壊して封印を解いた。
「私がヨル様を救うから、愛しているから!」
ポーラはヨルの首の後ろに両腕を回すと深く唇を重ねる。ヨルの愛も孤独も闇も、全てが唇を通してポーラの中に流れ込んでいく。
ヨルは薄目を開けてポーラを見つめていたが、次第に遠い前世の記憶が呼び起こされてくる。
(この瞳、あの時の聖女に似ている……)
遥か昔に三匹の悪魔の魂を体内に封印した、最強の聖女・エリス。あの時のエリスとポーラに対してヨルが抱く感情は共通している。
それは紛れもなく『愛しさ』。それに、記憶の中のエリスと今のポーラは同じ瞳をしている。それは『優しい』愛の眼差しであった。
ヨルは今、やっと真実に気付いた。前世の悪魔ヨルデオは、聖女エリスを愛していた。そして今世の自分はポーラを愛しているのだと。
(そうか……悪魔でないなら、オレは誰なんだ……)
真実を得た代わりに生まれた矛盾。自分を見失いかけたヨルの意識が現実に戻る。彷徨うヨルの心は、ポーラの唇の温もりと眼差しに導かれていく。
ヨルは、その流れに身を任せる。悪魔の体と融合するよりも、ポーラの中に全ての答えがある気がした。
(ヨル様、私の中に来て。私があなたを包むから)
二人の心が一つに重なると、ヨルの魂はポーラの体内に取り込まれる。全てが終わると、抜け殻となったヨルの体は崩れ落ちて床に倒れる。
しかし静寂は訪れない。破壊された祭壇から溢れ出した黒い魔力が融合し、巨体を形成しながら神殿の天井まで覆い尽くす。
ランナがその姿を確認しようと天井を見上げると、神殿を支える柱と天井が崩れ落ちる音と共に視界が暗転する。
「ヨル様っ!!」
ポーラがヨルの体を支えようとするが力が足らずに、抱き合う形で一緒に床に座り込んでしまう。
ランナとモニカはヨルの背中側に回って傷口を確認する。出血は多くないものの、背中の中心から突き刺さった矢は胸まで貫通している。
治癒の能力を持つモニカが傷口に手をかざすが、ヨルが体を捩って拒絶した。
「構うな、朝の女」
ヨルは苦痛に顔を歪めながらも、モニカを睨みつける赤い瞳の炎は生気を失っていない。さらに強引に口角を上げて笑みを作る。
「どうせ、この体はもう不要だ。オレは悪魔の体を得るのだからな」
「バカ!!」
ヨルの言葉に被せるように放たれた怒声は、ランナではなくポーラの声だった。その気迫に驚いたモニカとランナの肩が跳ねてしまう。
そしてヨルも思わず黒い瞳を丸くしてポーラの顔を驚きの目で見返している。
「悪魔になろうとしないで! ヨル様は悪魔の魂に支配されているだけなのよ!」
「うるさい……オレは……最強の悪魔に……」
「いい加減に気付いて、ヨル様は悪魔じゃない!!」
ポーラの叫びと共に金色の瞳から涙が弾け飛ぶ。ポーラには分かっていた。神殿に封印されているのは悪魔ではない事に。
ヨルの孤独な時間に寄り添って愛し合ったからこそ、ポーラはヨルの全てを理解していた。
決して誰かを裏切った訳でもない。それを証明するためにポーラは祭壇を破壊して封印を解いた。
「私がヨル様を救うから、愛しているから!」
ポーラはヨルの首の後ろに両腕を回すと深く唇を重ねる。ヨルの愛も孤独も闇も、全てが唇を通してポーラの中に流れ込んでいく。
ヨルは薄目を開けてポーラを見つめていたが、次第に遠い前世の記憶が呼び起こされてくる。
(この瞳、あの時の聖女に似ている……)
遥か昔に三匹の悪魔の魂を体内に封印した、最強の聖女・エリス。あの時のエリスとポーラに対してヨルが抱く感情は共通している。
それは紛れもなく『愛しさ』。それに、記憶の中のエリスと今のポーラは同じ瞳をしている。それは『優しい』愛の眼差しであった。
ヨルは今、やっと真実に気付いた。前世の悪魔ヨルデオは、聖女エリスを愛していた。そして今世の自分はポーラを愛しているのだと。
(そうか……悪魔でないなら、オレは誰なんだ……)
真実を得た代わりに生まれた矛盾。自分を見失いかけたヨルの意識が現実に戻る。彷徨うヨルの心は、ポーラの唇の温もりと眼差しに導かれていく。
ヨルは、その流れに身を任せる。悪魔の体と融合するよりも、ポーラの中に全ての答えがある気がした。
(ヨル様、私の中に来て。私があなたを包むから)
二人の心が一つに重なると、ヨルの魂はポーラの体内に取り込まれる。全てが終わると、抜け殻となったヨルの体は崩れ落ちて床に倒れる。
しかし静寂は訪れない。破壊された祭壇から溢れ出した黒い魔力が融合し、巨体を形成しながら神殿の天井まで覆い尽くす。
ランナがその姿を確認しようと天井を見上げると、神殿を支える柱と天井が崩れ落ちる音と共に視界が暗転する。



