次の日の朝。薬師の姉妹はいつも7時くらいに起床する。
寝間着から白いワンピースに着替えたランナが寝室を出てリビングに行くと、そこには同じ服装、いつもの顔をしたポーラがキッチンに立っていた。
薬師としての診療は昼の12時から開始で、それまでは二人で洗濯や掃除などの家事を行う。
ランナは、キッチンで朝食のパンを切るポーラの手元ではなく顔色を覗き込む。
「姉さん、大丈夫……?」
心配そうに問いかけると、ポーラは手を止めていつもの微笑みを返す。
「ごめんなさい。昨日の事、あまり覚えてなくて。やっぱり疲れてるのかしら」
ポーラは左手で自分の頬に触れながら首を傾げるが、その薬指には暗黒の指輪がはめられている。ランナの黄金の指輪と比べると禍々しく見えてしまう。
ランナは昨晩、自分の指輪を外そうとして腕力も聖力も使って奮闘したが効果がなかった。やはり物理的な問題ではなく呪いの類だと思われる。
(姉さんが変になったのも、絶対にこの指輪のせいよ! ヒル様もヨル様も何者なの!?)
ランナはそう思うが、今はそれを声に出してポーラを刺激したくない。ヒルは『また来る』と言っていたので、その時に問い詰めるしかない。
それに昨晩のポーラの発言を聞く限りではヨルも再び来るらしいが、どちらが先に来るのかは分からない。
その時、玄関のドアの外から呼び鈴が鳴り響いてきた。古びた木造の家ではあるが、狭いリビングは玄関と繋がっているので来客に気付きやすい。
「こんな朝早くに誰だろう? 私が出るね!」
ランナが玄関まで駆け寄って鍵を開ける。そしてドアを開けると、目の前に立っていたのは見知らぬ男性。見た目は20代前半くらいだろうか。
この街の患者なら大抵は顔見知りだが、その男はどう見ても貴族。ウエストコートもその上に羽織っているコートも白、さらに銀髪。瞳だけは差し色のように赤い。
何者かという疑問よりも先に、神々しいとまで思える純白の輝きと美しさに目を奪われて息を呑む。しかしハッと我に返る。
「あ、診察は12時からです。申し訳ありませんが、また後ほど来て……」
「おはようございます。清々しい朝ですね」
男性は、まさに朝日のように眩しく清々しい笑顔で挨拶をしてきた。庶民に敬語を使うとは紳士的な貴族だが、その微笑みの視線の先はランナの顔ではなく左手の薬指。
ランナはその視線を不思議に思ったが、男性が帰ろうとしないので今度は眉を下げて困った顔をしてみる。
「どちら様でしょうか? 何か御用でしょうか」
「はい、用があります。この家にはもう一人女性がいませんか?」
「ポーラ姉さんに御用ですか? 失礼しました、私は妹のランナです」
ランナが振り返ってリビングを見ると、ポーラはテーブルの上にトーストを乗せた皿を置いていた。
「姉さーん! お客様!」
狭いリビングなのでランナの声はすぐにポーラの耳に届いた。ポーラがすぐに急ぎ足で玄関に来るが、ドアの外に立つ男性の姿を見ると怪訝な顔をする。
「えっと……どちら様ですか?」
「え? 姉さんの知り合いじゃないの?」
ランナが横のポーラに顔を向けた瞬間、男性は玄関の中にまで進んでポーラの左手の手首を掴み上げる。その薬指にはめられた黒い指輪を確認すると、すぐに手を離した。
「きゃっ……何ですか?」
「失礼しました」
男性は軽く一礼するとすぐに顔を上げる。ランナは改めて男性の顔を見るが、初対面なのに既視感がある。彼から感じる生気にも。
寝間着から白いワンピースに着替えたランナが寝室を出てリビングに行くと、そこには同じ服装、いつもの顔をしたポーラがキッチンに立っていた。
薬師としての診療は昼の12時から開始で、それまでは二人で洗濯や掃除などの家事を行う。
ランナは、キッチンで朝食のパンを切るポーラの手元ではなく顔色を覗き込む。
「姉さん、大丈夫……?」
心配そうに問いかけると、ポーラは手を止めていつもの微笑みを返す。
「ごめんなさい。昨日の事、あまり覚えてなくて。やっぱり疲れてるのかしら」
ポーラは左手で自分の頬に触れながら首を傾げるが、その薬指には暗黒の指輪がはめられている。ランナの黄金の指輪と比べると禍々しく見えてしまう。
ランナは昨晩、自分の指輪を外そうとして腕力も聖力も使って奮闘したが効果がなかった。やはり物理的な問題ではなく呪いの類だと思われる。
(姉さんが変になったのも、絶対にこの指輪のせいよ! ヒル様もヨル様も何者なの!?)
ランナはそう思うが、今はそれを声に出してポーラを刺激したくない。ヒルは『また来る』と言っていたので、その時に問い詰めるしかない。
それに昨晩のポーラの発言を聞く限りではヨルも再び来るらしいが、どちらが先に来るのかは分からない。
その時、玄関のドアの外から呼び鈴が鳴り響いてきた。古びた木造の家ではあるが、狭いリビングは玄関と繋がっているので来客に気付きやすい。
「こんな朝早くに誰だろう? 私が出るね!」
ランナが玄関まで駆け寄って鍵を開ける。そしてドアを開けると、目の前に立っていたのは見知らぬ男性。見た目は20代前半くらいだろうか。
この街の患者なら大抵は顔見知りだが、その男はどう見ても貴族。ウエストコートもその上に羽織っているコートも白、さらに銀髪。瞳だけは差し色のように赤い。
何者かという疑問よりも先に、神々しいとまで思える純白の輝きと美しさに目を奪われて息を呑む。しかしハッと我に返る。
「あ、診察は12時からです。申し訳ありませんが、また後ほど来て……」
「おはようございます。清々しい朝ですね」
男性は、まさに朝日のように眩しく清々しい笑顔で挨拶をしてきた。庶民に敬語を使うとは紳士的な貴族だが、その微笑みの視線の先はランナの顔ではなく左手の薬指。
ランナはその視線を不思議に思ったが、男性が帰ろうとしないので今度は眉を下げて困った顔をしてみる。
「どちら様でしょうか? 何か御用でしょうか」
「はい、用があります。この家にはもう一人女性がいませんか?」
「ポーラ姉さんに御用ですか? 失礼しました、私は妹のランナです」
ランナが振り返ってリビングを見ると、ポーラはテーブルの上にトーストを乗せた皿を置いていた。
「姉さーん! お客様!」
狭いリビングなのでランナの声はすぐにポーラの耳に届いた。ポーラがすぐに急ぎ足で玄関に来るが、ドアの外に立つ男性の姿を見ると怪訝な顔をする。
「えっと……どちら様ですか?」
「え? 姉さんの知り合いじゃないの?」
ランナが横のポーラに顔を向けた瞬間、男性は玄関の中にまで進んでポーラの左手の手首を掴み上げる。その薬指にはめられた黒い指輪を確認すると、すぐに手を離した。
「きゃっ……何ですか?」
「失礼しました」
男性は軽く一礼するとすぐに顔を上げる。ランナは改めて男性の顔を見るが、初対面なのに既視感がある。彼から感じる生気にも。



