朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師

 モニカはアサの頬に触れていた両手を首の後ろへと回して抱きしめる。
 銀髪のアサと銀髪のモニカ。朝日のような白銀の夫婦が一体となる。

「アサ様、愛しています」

 二人の唇が重なり合った時、聖力に包まれたアサの魂が熱を伴ってモニカの体内に流れ込む。
 アサの愛と魂を取り込んだモニカの体はプラチナ色に輝き、全てを吸収すると光が静かに消えていく。

(アサ様が私の中に……温かい)

 モニカはアサから離れると自分の胸に両手を重ねてアサの存在を感じ取る。
 目の前のアサを見ると、銀色の髪が金色を帯びながら色付いていく。まるでバトンタッチのように、アサからヒルへと人格が移り変わっていく。
 壇下のランナがヒルの金髪を確認した瞬間に衝動的に足が前に出る。

「ヒルくん!!」

 横に立つポーラがランナの背中を優しく押した。モニカに続いて、今度はランナの番であると伝えるように。

「ランナ、行きなさい」

 ランナは振り返り、互いに金の瞳を合わせると大きく頷く。ランナが階段を上り始めると、壇上のモニカは横へ移動してランナに道を開ける。
 階段を上るランナが目指す先には、両手を広げてランナを待ち構える金髪の彼の姿が見える。

「来い、ランナ!!」

 弾けるようなヒルの一声に導かれて、ランナは階段を上り切る前に駆け出す。
 白いドレスの裾を膝が見えるほどに乱暴に掴み上げて、前のめりに倒れそうになりながらヒルの胸の中に飛び込んでいく。

「ヒルくん、ヒルくん……うっ、あぁぁ、わぁぁ!!」
「おいランナ、大泣きしすぎだぞ……」

 ヒルはランナの背中を両腕で強く抱きしめると、さらに頬と頬と触れさせて体温を感じ合う。
 しかしヒルに残された時間は、あと僅か。いつも太陽のように明るいヒルの笑顔は今にも涙が降りそうな雨模様だった。

「ランナ、最後に会えて良かった。オレはランナをずっとずっと愛してるからな。忘れるなよ」
「最後じゃない! そんなこと言わないで、そんな顔しないで!!」

 ランナは大粒の涙を零しながらヒルを叱りつける。二人の頬が離れると二人の視線が重なり、吐息を感じるほどに唇の距離が縮まる。
 しかし、すぐにヒルはランナの体を離して横に置く。そして、いつの間にかランナの背後に立っていたカレンに向かって叫ぶ。

「カレン、オレを斬れ!!」

 ランナが振り返ると、鞘から抜いた剣を握りしめたカレンがヒルを見据えている。

「オレの人格が出てるうちに早く斬れ!!」
「いや!! ヒルくん、カレンさん、やめて!!」
「カレン、命令だ!! オレは悪魔になりたくねぇんだよ!!」

 ランナの制止も聞かずに、ヒルはヨルを道連れにして死ぬ道を選んだ。