ランナは急いで朝の城へと向かい、アサの自室の扉を開ける。
部屋に入って寝室まで進むと、アサのベッドの前にはモニカ、そしてポーラの姿があった。
大きな白いベッドにはアサが仰向けで眠っているように見えたが、嫌な予感でランナの鼓動と呼吸が乱れてくる。
「モニカ様……アサ様は……?」
ランナは震える声でモニカの背中に問いかける。ベッドの前で両膝をついて座っていたモニカが振り返ると、その頬は涙で濡れている。
「朝食に昨日のパンを召し上がったのですが……それから苦しみだして、今は意識がないのですわ……」
「で、でも……モニカ様も食べたんですよね?」
「はい……私は何ともないですし……アサ様のお食事は必ず誰かが毒味しますし……」
涙声で声が震えているモニカを補足するかのように、横に立つポーラが冷静に付け加える。
「これは魔法薬の毒による症状よ……パンに魔法薬を仕込んだのね」
ポーラの突き刺すような視線と冷たい口調は、明らかにランナを疑っている。
ランナは何を考えるよりも先に薬師の本能で体が勝手に動いてしまう。アサのベッドに近付くと毛布の中に手を入れて彼の手を握る。
思えばアサの生気の色を確認するのはこれが初めてだが、ヒルの色ともヨルの色とも全く違う。朝日のように眩しい純白だが、生命の光は消えかけている。
「これは、魔法薬による中毒症状……」
ランナは思っている事を独り言のように口に出してしまった。それを聞いた隣のモニカの瞳が覚醒したように見開く。
特定の人格だけに効く毒薬なんて魔法薬しかありえない。そして人格を殺す毒薬を調合できるのはランナしかいない。
次の瞬間、ランナは強い力の衝撃を受けて床に倒れた。信じられない思いで顔を上げると、モニカが自分を突き飛ばしたのだと確信した。
「ランナさん、あなたですわね!? あなたが、アサ様を毒殺しようとした!!」
「モニカ様、ちがう……」
「あなたしかいませんわ!! 何が約束よ、何が薬師よ! 人殺し!!」
穏やかで天使のようだったモニカの口から、信じられないような罵声が浴びせられる。悪魔のような言葉を吐いて泣き叫ぶモニカは正気ではなかった。
そんな中でも冷静に感情を保っているポーラがランナを追い詰める。
「自白したわね。こんな毒の魔法薬は、あんたしか作れないのよ」
ランナはそれを否定できない。確かにファイア国王の時には呪いの効果を殺す『毒薬』が調合できた。王妃の中で特殊な毒薬を調合できるのはランナだけ。
だがランナは、微かな別の可能性も否定できない。信じたくはないし認めたくないが、先ほどのアサの生気の中に微かにポーラに似た生気を感じた。
(もしかして、ポーラ姉さんも毒薬を調合できるように……?)
ランナ以外で魔法薬を調合できるのはポーラのみ。昨日のパン作りの最中に、材料の小麦粉を密かに調合して毒薬に変えていたとしか考えられない。
それをランナが口に出したとしても信憑性は全くない。それよりもアサの命を救う方が先決だと思った。
「解毒の薬を調合するので、米粉か小麦粉を……」
ランナが言いかけたところで、ベッドの端にいたポーラが一歩前に出て怒声を上げる。
「いい加減にしなさい! あんたの薬なんか信用できないでしょ!?」
責め立てるポーラの気迫に押されたランナは涙を浮かべながら後ずさる……が、それ以上は下がれなかった。
いつの間にか後方には何人もの兵が控えていて、一斉に動くとランナを拘束して捕らえた。
部屋に入って寝室まで進むと、アサのベッドの前にはモニカ、そしてポーラの姿があった。
大きな白いベッドにはアサが仰向けで眠っているように見えたが、嫌な予感でランナの鼓動と呼吸が乱れてくる。
「モニカ様……アサ様は……?」
ランナは震える声でモニカの背中に問いかける。ベッドの前で両膝をついて座っていたモニカが振り返ると、その頬は涙で濡れている。
「朝食に昨日のパンを召し上がったのですが……それから苦しみだして、今は意識がないのですわ……」
「で、でも……モニカ様も食べたんですよね?」
「はい……私は何ともないですし……アサ様のお食事は必ず誰かが毒味しますし……」
涙声で声が震えているモニカを補足するかのように、横に立つポーラが冷静に付け加える。
「これは魔法薬の毒による症状よ……パンに魔法薬を仕込んだのね」
ポーラの突き刺すような視線と冷たい口調は、明らかにランナを疑っている。
ランナは何を考えるよりも先に薬師の本能で体が勝手に動いてしまう。アサのベッドに近付くと毛布の中に手を入れて彼の手を握る。
思えばアサの生気の色を確認するのはこれが初めてだが、ヒルの色ともヨルの色とも全く違う。朝日のように眩しい純白だが、生命の光は消えかけている。
「これは、魔法薬による中毒症状……」
ランナは思っている事を独り言のように口に出してしまった。それを聞いた隣のモニカの瞳が覚醒したように見開く。
特定の人格だけに効く毒薬なんて魔法薬しかありえない。そして人格を殺す毒薬を調合できるのはランナしかいない。
次の瞬間、ランナは強い力の衝撃を受けて床に倒れた。信じられない思いで顔を上げると、モニカが自分を突き飛ばしたのだと確信した。
「ランナさん、あなたですわね!? あなたが、アサ様を毒殺しようとした!!」
「モニカ様、ちがう……」
「あなたしかいませんわ!! 何が約束よ、何が薬師よ! 人殺し!!」
穏やかで天使のようだったモニカの口から、信じられないような罵声が浴びせられる。悪魔のような言葉を吐いて泣き叫ぶモニカは正気ではなかった。
そんな中でも冷静に感情を保っているポーラがランナを追い詰める。
「自白したわね。こんな毒の魔法薬は、あんたしか作れないのよ」
ランナはそれを否定できない。確かにファイア国王の時には呪いの効果を殺す『毒薬』が調合できた。王妃の中で特殊な毒薬を調合できるのはランナだけ。
だがランナは、微かな別の可能性も否定できない。信じたくはないし認めたくないが、先ほどのアサの生気の中に微かにポーラに似た生気を感じた。
(もしかして、ポーラ姉さんも毒薬を調合できるように……?)
ランナ以外で魔法薬を調合できるのはポーラのみ。昨日のパン作りの最中に、材料の小麦粉を密かに調合して毒薬に変えていたとしか考えられない。
それをランナが口に出したとしても信憑性は全くない。それよりもアサの命を救う方が先決だと思った。
「解毒の薬を調合するので、米粉か小麦粉を……」
ランナが言いかけたところで、ベッドの端にいたポーラが一歩前に出て怒声を上げる。
「いい加減にしなさい! あんたの薬なんか信用できないでしょ!?」
責め立てるポーラの気迫に押されたランナは涙を浮かべながら後ずさる……が、それ以上は下がれなかった。
いつの間にか後方には何人もの兵が控えていて、一斉に動くとランナを拘束して捕らえた。



